関西学連 熱中症ガイド

はじめに
夏季のテニスは熱中症のリスクが非常に高くなります。
選手の安全を確保し、最高のパフォーマンスを維持するため、熱中症の予防策と緊急時の対応についてまとめました。
選手、監督、関係者全員が本ガイドの内容を理解し、適切な対策を講じることを強く推奨します。
熱中症予防の4つの基本原則
熱中症対策は、以下の4つの行動が基本となります。
暑熱順化
梅雨明けなど、急に暑くなる時期は要注意。
いきなり高い負荷をかけるのは危険です。体調を見ながら練習量を一時的に減らすなど、計画的に体を暑さに慣らしていきましょう。併せて、アイススラリーの活用も始めましょう。
こまめな冷たい水分補給
「喉が渇いた」と感じる前に、こまめに水分を摂取してください。試合や練習の30分前から開始し、プレー中も定期的に補給することが重要です。
コートサイドでの水分補給は、チェンジサイドだけでなく、ポイント間の25秒でもルール上認められています。積極的に活用してください。
体の内部を冷やす
体の中心部の温度(深部体温)の上昇を抑えることが最も重要です。
特に「手のひら冷却」と「アイススラリーの摂取」は効果的な手段です。
アイスラリーとは
アイススラリーは凍らせたスポーツドリンクなどをシャーベット状にした飲料で、摂取することで深部体温を下げる、あるいは上昇を抑える効果があります。
練習前、練習中の休憩時にこまめに摂取しましょう。目安は1回にコップ1杯程度です。
無い場合は氷を口に含んで溶かしたりすることでも冷やす効果が期待できます
手のひら冷却の方法
①バケツなどに水をはり、氷で10~15度程度に冷やす
②数分から10分程度、両手のひらを①に浸す
*足裏にも同様の血管部位があり、くるぶしから下くらいの足を冷やす「足底冷却」でも深部体温を下げる効果が見込めます
【代用OK】冷やしたペットボトルを、手のひらで握る・転がすだけでも効果があります
※凍らせると温度が低すぎるので注意
コンディション管理
日々の睡眠、栄養を十分に確保し、体調を整えることが予防の第一歩です。体調不良を感じた際は、決して無理をしないでください。
状況別の具体的対策
試合・練習前
・水分補給: 開始30分前から250~500mlの水分を摂取する。
・装備: 十分な量の飲料、氷、タオル、帽子を準備する。
・体調確認: 睡眠不足や疲労がないか確認する。
試合・練習中
・手のひら冷却: チェンジオーバー等の休憩時、15℃程度の冷水で10~15分間、手のひらを冷やす。
・首筋等の冷却: 氷嚢や冷たいタオルで首筋、脇の下、足の付け根などを冷やす。
・水分補給: 休憩ごとに必ず水分と、必要に応じて塩分や糖分を補給する。
試合・練習後
・クールダウン: 日陰などの涼しい場所で体を休ませる。
・水分補給: 練習で減少した体重を目安に、失われた水分を時間をかけて補給する。
・栄養補給: 疲労回復のため、炭水化物やタンパク質を含む食事を摂る。
見逃してはならない危険な兆候
熱中症の症状は重症度によって異なります。軽度のサインを見逃さず、早期に対応することが重要です。
重症度 | 主な症状 |
軽度 | めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん(こむら返り)、大量の発汗 |
中等度 | 頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、集中力や判断力の低下 |
重度 | 意識障害(呼びかけへの反応が鈍い、言動がおかしい)、けいれん |
緊急時の対応
重度の症状が疑われる場合は、命に関わる緊急事態です。ためらわず、以下の手順で行動してください。
1.直ちにプレーを中断し、救急車を要請する (119番)
判断に迷った場合でも、すぐに要請してください。
2.涼しい場所へ避難させる
日陰や冷房の効いた室内へ移動させます。
3.体を冷やす
- 衣服をゆるめ、氷嚢などで首、脇の下、足の付け根を集中して冷却します。
- 救急隊の到着を待つ間、冷却を続けてください。
参考文献

https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/heat-disorders/casestudy/sports/